京都市 様

導入自治体:京都市 様

DX推進の要としてサテライトAIを導入
市長部局の全職員7000人にアカウントを一斉付与
「日常業務の相棒」として利用促進

悠久の歴史の中で磨き上げられた文化と景観が息づく「千年の都」、京都市。その行政を担う京都市役所ではDX推進の一環として生成AIの活用を検討。実証実験を経て、公募によりサテライトAIを選定した。「日常業務の相棒」として利用促進を図り、導入5カ月後の時点で利用者数は全職員の約3割にあたる約2000人に広がっている。

京都市の概要・特長について教えてください。

当市は、悠久の歴史の中で磨き上げられた文化と景観が息づく「千年の都」です。数多の寺社仏閣をはじめとした歴史や文化に加えて、大学のまち、ものづくり都市、環境先進都市、多文化共生都市などの顔もあり、伝統と先進性の両面性、多様性、奥深さを有しています。

生成AIを活用するきっかけは?

2022年に「京都市DX推進のための基本方針」を策定し、全庁でDXに取り組む指針を打ち出しました。京都市といえば観光客向けのデジタル活用や、魅力発信・交流拠点創出を目的としたメタバース施策も展開していることから先進的なイメージもあるかもしれませんが、その一方で職員のICTスキルが思うように高まらないことを、デジタル化戦略推進室では懸念に感じていました。
2022年末にChatGPTが公開され、生成AIがセンセーションを巻き起こしました。2023年春頃には民間企業や自治体でも生成AIへの関心が高まり、当市も活用の検討をスタートさせました。2023年8月には30人規模、11月には500人規模で、ある事業者の生成AIサービスを試行導入し、実証実験を行いました。
8月の実証では、公募で集まった職員がデジタルツールについて学習・研究する「京都DXラボ」のメンバーに試用を依頼。2度目の11月では、市政の中枢を担う総合企画局、行財政局職員へと対象を広げ、アイデア考案や文章作成・校正、翻訳といった様々な業務で検証を実施しました。その結果「多様な業務で活用可能」との結論を得たことに加え、試用した職員からも「普段30分かかっていた作業が5分で済んだ」、「引き続き使いたい」といった声が多く出たことから、翌2024年度の本格導入に向けてプロジェクトが動き出しました。

京都市 様京都市総合企画局 デジタル化戦略推進室
デジタル化推進課長 延原和雄氏
京都市 様京都市総合企画局 デジタル化戦略推進室
デジタル化戦略係長 原 正直氏
サテライトAIを選定した経緯は?

2024年7月からソリューションを公募し、導入事業者を選考しました。全事業者にトライアル利用の提供を求めて実際に比較検討を行いました。
情報セキュリティは、2023年度に実施した検証時点からやはり大きな懸念でした。職員が入力したプロンプトの内容が生成AIの学習に使われないように制御されているか、そもそも入力した情報が流出しないようになっているか、といった観点に留意して検証を行いました。そこで安全性を確認できたことにより、本格導入にはずみがついたのです。公募においてもセキュリティ上の要件は大前提に、比較を進めました。
また、セキュリティ面に加えて、RAG(検索拡張生成)の機能も重要視しました。充実度や使いやすさです。自治体業務での活用にあたって、検証で試行したアイデア考案や文章作成などの使い方のほかに、内部のマニュアルや規定をAIに学習させ、必要な回答を引き出すチャットボット作成のニーズも必ず出てくると考えていたからです。
運用のしやすさもポイントになりましたが、サテライトAIは管理コンソールが比較的シンプルで使いやすく、職員の一括登録も容易など、管理者のことを考えた機能が充実していました。予算とも照らし合わせた結果、応募した11社から最終的に選定したのがサテライトAIでした。

導入決定から、本格運用開始までの期間は? また、導入時に苦労した点があれば教えて下さい。

サテライトAIの提案が総合的に優れていると判断し、8月中旬に導入を決定。1カ月半程度の準備期間を経て、9月末に市長部局の保健福祉、文化、産業振興、建設・都市計画などの全常勤職員7000人強にアカウントを一斉付与し、本格導入がスタートしました。申請した職員だけに使用を認める方法もありますが、それでは生成AIに興味を持つ職員しか使わないことにもつながりかねず、普及させていくうえで致命的になると考えました。まずは誰もが自由に使える環境を整備し、「日常業務の相棒」としていろいろ試してもらいながら利活用を促進していくことが大切だと考え、全職員に付与しました。
本格導入にあたり、生成AIのことを知らない、あるいは聞いたことはあっても初めて使うという職員が多かったため、周知や職員教育に力を入れました。生成AIとはそもそもどういうもので、どういった使い方が適しており、こうした部分には注意しなければならない、といった点を職員向けガイドブックにまとめて配布しました。とりわけ、ハルシネーション(事実とは異なる回答を生成すること)対策として、生成AIの答えを鵜呑みにせず人の目でしっかりチェックすることや、著作権の侵害リスクなど、留意すべきことについては周知を徹底しました。
ただ、それ以外のサテライトAIの導入自体には、サテライトオフィスの担当者から随時適切なサポートを受けることができ、職員の一括登録や、設定、効率的な操作方法について特段の苦労は感じませんでした。
この準備期間では、職員のログインを容易にしながらセキュリティも高めるシングルサインオンを採用したり、生成AIを初めて使う職員向けのテンプレートを用意したりといった工夫を、サテライトオフィス担当者や生成AI研究者のサポートを得ながら実施。そうした努力が実り、9月末の運用開始から2週間で約1000人の職員が、実際にサテライトAIで何らかのプロンプトを入力するという実績につながりました。

京都市 様京都市総合企画局
デジタル化戦略推進室 中川敬博氏
サテライトAIの概要、現在の運用状況について教えてください。

サテライトAIは、一般的な生成AIの画面からチャットボットのように利用できる「AIボード」、RAG技術によりファイルの内容を要約して高精度の回答を得られる「AIドキュメント」をはじめ、議事録作成や社内チャットなど多種多様な機能で構成されています。このうち当市ではAIボードとAIドキュメントの2つの機能を主に利用しています。AIボードは、入力したプロンプトが生成AIの再学習に利用されないようなセキュリティ対策が当然施されていますし、入力をサポートするテンプレート機能があるため、生成AIに不慣れな職員でも安心です。ChatGPTやGoogle Geminiといった複数のLLM(大規模言語モデル)を用途に応じて切り替えられるのも便利ですね。また、AIドキュメントを用いて、職員が任意にアップロードしたPDFなどのファイルに基づいてAIが回答を生成する独自のチャットボットを作成しています。そのチャットボットをほかの職員にも共有できるのもメリットですね。
実際の業務では、AIボードで文章作成・校正や翻訳、アイデア出し、調べ物、プログラミングなど多岐にわたって使われています。AIドキュメントでも、部署が保有するマニュアルをRAGで学習させ、他部署向けのチャットボットを作成・展開しています。
導入5カ月後の時点で利用者数は2000人強にまで広がり、AIボードとAIドキュメントを合わせて10万回を超える質問が生成AIに対し投げかけられています。運用開始前に目安にしていた利用率が15%だったので、その数字を大きく超え、3割近くに届いている点では良いスタートになりましたし、当市のAI活用に向けて着実な第一歩を踏み出せたと考えています。

職員からの評価・評判について。サテライトAIの使い勝手などの評価はいかがですか?

当市ではサテライトAI以外にもデジタルツールを導入しており、ツール単体で業務効率化の具体的な効果をはかるのは難しいものの、参考になる数字はあります。2024年12月に実施した職員アンケートでは、生成AIを定期的に利用している職員のうち95%以上から「今後もサテライトAIを利用したい」という回答を得ており、デジタル化戦略推進室では手応えを感じています。具体的には、AIドキュメントで、AIが生成した回答に加えて、その回答の情報源を表示する機能を高く評価する声がありました。生成AIはやはりハルシネーションが課題となるので、この機能はサテライトAI独自のものとしてとても便利ですし、生成AIを安心して使える根拠にもなっています。課題だったICTスキルの観点でも生成AIは大きなインパクトがあり、デジタルリテラシーとスキル向上のきっかけになりました。

課題は?

利用者数“7000分の2000”という現状は目標を超える数字ではあるものの、今後はその数をさらに増やしていくことが課題です。やはり生成AIの利用を躊躇う部署や職員も依然多いですし、まだ使っていない部署や職員にも積極的に活用してもらい、業務をより効率化できるよう、研修や周知に力を入れていきたいと考えています。

サテライトオフィスのサポート体制についてはいかがでしょうか。

サポートの動きがとても早く、機能改善要望にも迅速かつ真摯に対応してくれています。導入後も新たな言語モデルへの対応や、生成AI市場の最新情勢を捉えて情報収集する機能をはじめ新サービスを素早く提供してくれますので、利便性の観点から高く評価しています

今後、導入する自治体や企業へのアドバイスがあれば教えて下さい。

実際に普及させ、活用を促進するには、教育・研修がきわめて重要になります。またサービス選定にあたっては、基本的な性能や機能の使い勝手、セキュリティ性の高さはもちろんですが、一部の部署で試行的に導入するなど、そのサービスが自組織のニーズに合致するのかどうか、十分に検証することをおすすめしたいですね。

京都市 様京都市役所
基本データ

京都市
【ホームページURL】
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