第79回


企画書や提案資料を作るたびに、構成やデザインの検討に時間を取られていないでしょうか。
Google の生成AI「Gemini」には、テーマを伝えるだけでプレゼンテーション資料をひとまとまり生成する機能が搭載されています。
同様のスライド自動生成機能はNotebookLMなど他のGoogle製ツールにも次々と追加されており、どれを使えばよいのか迷う担当者も増えています。
本記事では、Geminiでスライドを作成する具体的な方法とプロンプトの書き方に加え、社内で混同されがちな類似機能との違いを、企業のIT担当者に向けて整理します。

Geminiでスライドを作成する方法は、実は一つではありません。
「Gemini スライド作成」と検索すると、複数の手順や画面が紹介されていて戸惑った経験がある方も多いのではないでしょうか。
Geminiには、チャットアプリの「Canvas」によるスライド生成と、Googleスライドに組み込まれた「Gemini in Google スライド」という、性質の異なる2つの機能が存在します。
前者はゼロから資料一式を作り上げる創作寄りのツールであり、後者はすでに開いているファイルに手を加える編集寄りのツールという位置づけです。
この違いを理解しないまま操作すると、「サイドパネルを開いたのに新しいデッキが出てこない」といったすれ違いが起きやすくなります。
背景には、Geminiアプリがドキュメントやコード、画像なども含めた汎用的な創作支援ツールとして進化してきた経緯があると考えられます。
一方でGoogleスライドに埋め込まれたサイドパネルは、既存の資料作成フローを崩さずに部分的な支援を行うことを目的に設計されているとみられます。
つまり「新しい資料を1から作りたいのか」「今開いている資料に手を加えたいのか」という目的の違いが、そのまま機能の使い分けにつながっているわけです。
| 比較項目 | Canvas(Geminiアプリ) | サイドパネル(Gemini in Google スライド) |
|---|---|---|
| 起動場所 | Geminiアプリのツールバー | Googleスライド右上のアイコン |
| 得意なこと | ゼロベースでの資料一式の生成 | 開いているファイルへの部分的な追加・要約 |
| テーマ・デザイン | 新規に決定される | 編集中のテーマを引き継ぐ |
| 出力形式 | Googleスライド、PDF、公開リンク | 編集中のファイルに直接挿入 |
新しい提案書を一から作りたいならCanvas、既存の資料に手を加えたいならサイドパネルという住み分けで考えると迷いにくくなります。
Geminiアプリの Canvas は、2025年12月に追加された比較的新しい機能です。
テーマを伝えるだけで、構成・デザイン・関連画像を含む一そろいのプレゼンテーションを新規に組み立ててくれます(出典:Google公式note)。
既存のPDFやWebページ、議事録などをアップロードして要約させることも可能で、まとまった量の資料をたたき台に落とし込みたい場面に向いています。
対応可能な入力の幅が広いぶん、プロンプトの書き方次第で仕上がりの質が大きく変わってくる機能ともいえます。
チャット欄にプロンプトを入力すると、スライドがリアルタイムに生成・更新されていく様子を画面上で確認できるため、狙いと違う方向に進んだ時点ですぐに指示を修正できます。
「Gemini in Google スライド」は、すでに開いているプレゼンテーションの右上にあるアイコンから呼び出すサイドパネル機能です。
編集中のテーマを引き継いだ新規スライドの生成のほか、文章の要約や書き換え、ドライブ内ファイルを参照したスライド作成にも対応しています(出典:Google ドキュメント エディタ ヘルプ)。
この機能を利用するには、対象となるGoogle WorkspaceプランまたはGoogle AIプランへの加入が前提となります。
すでに社内で使っている資料の一部だけをGeminiに手伝ってもらいたい、という日常的な用途ではこちらの方が扱いやすいでしょう。
プロンプト内で「@」に続けてファイル名を指定すれば、ドライブ内の関連資料を参照しながらスライドを生成させることもできます。

実際の操作は、想像しているよりもシンプルです。
Canvasでのスライド生成には、押さえておきたいコツが2点あります。
| 手順 | 操作内容 |
|---|---|
| 1 | Geminiアプリのツールバーで Canvas を選択する |
| 2 | プロンプトに「スライド」「プレゼンテーション」などのキーワードを含めて指示する |
| 3 | 生成されたスライドを確認し、追加の指示で調整する |
| 4 | Googleスライドへのエクスポート、PDF出力、リンク共有のいずれかで完成物を取り出す |
この4ステップさえ押さえれば、資料作成にあまり慣れていない担当者でも迷わず操作できます。
プロンプトには、必ず「スライド」「スライドデッキ」「プレゼンテーション」「ppt」のいずれかの単語を含めます。
このキーワードが抜けていると、Geminiが通常のチャット回答として処理してしまい、スライド形式で出力されないことがあるためです(出典:Google公式note)。
実務では「テーマ」「構成」「トーン」「想定する読み手」の4要素を1つの指示にまとめると、狙いに近い資料が一度で生成されやすくなります。
この4要素を毎回テンプレート化しておくと、担当者が変わっても一定の質を保ちやすくなります。
一度で完璧な資料を狙う必要はありません。
生成されたスライドを見ながら「3枚目の事例をもう少し具体的にして」「全体をもう少しフォーマルなトーンにして」といった対話形式の追加指示を重ねていくと、完成イメージに近づけやすくなります。
最初のプロンプトで8割の完成度を目指し、残り2割は対話で詰めていくという感覚で臨むと、時間をかけすぎずに使いこなせます。
ゼロから作るだけでなく、手元にある議事録やレポート、企画書のPDFをアップロードして要約させる使い方も実務的です。
アップロードした資料の要点をGeminiが抽出してスライド単位に再構成するため、長文の報告書を経営会議用の資料に落とし込む作業を大きく圧縮できます。
お気に入りのデザインのスクリーンショットを見せて「このレイアウトに似せて作成して」と指示すれば、配色やフォントの雰囲気を再現したスライドを新規に生成することも可能です。
Canvasで作成したスライドは、Googleスライドへのエクスポート、PDFとしてのダウンロード、Canvas公開リンクの共有という3つの方法で取り出せます。
PowerPoint形式で編集したい場合は、いったんGoogleスライドにエクスポートしてからダウンロードする流れになります。

Canvasのスライド生成は、社内のさまざまな資料作成シーンで応用できます。
新しい業務改善案やツール導入の提案は、頭の中にあるアイデアを言語化するだけでも一苦労です。
特にIT部門からの提案は、専門的な内容を非エンジニアの経営層にもわかる形で説明し直す作業が発生しがちで、資料化そのものに時間がかかってしまいます。
テーマと大まかな構成をプロンプトで伝えれば、Geminiがたたき台となるスライドを組み立ててくれるため、担当者は内容の肉付けに集中できます。
最初から完成形を目指すのではなく、壁打ち相手として使いながら構成案を見て議論を深めていく進め方が、実務では扱いやすいでしょう。
口頭で説明していたアイデアがその場でスライドという目に見える形になることで、上司や関係部署への説明もスムーズになります。
会議の議事録や調査レポートをそのまま共有するのではなく、要点を絞ったスライドに変換して報告したい場面は少なくありません。
既存ドキュメントをアップロードして要約を指示すれば、重要なポイントを抽出した数枚のスライドにまとめられます。
情報システム部門であれば、月次のセキュリティ報告やツール導入効果の説明資料づくりにも応用できます。
新入社員向けのITリテラシー研修や、社内システムの操作マニュアルづくりにもCanvasは役立ちます。
既存の手順書やFAQをアップロードして「初心者向けに、専門用語を避けたスライドにして」と指示すれば、対象者に合わせたトーンでたたき台が仕上がります。
ゼロから作成する場合に比べて、内容の骨組みを考える時間を大幅に減らせる点が実務上のメリットです。

スライドを自動生成できるGoogleのツールは、Geminiだけではありません。
同じくGoogleが提供する「NotebookLM」にも、2025年11月にスライド資料の生成機能が追加されました(出典:NotebookLM ヘルプ)。
NotebookLMはもともと、アップロードした資料を要約したり、資料に基づく質問に答えたりするリサーチ用のツールとして知られてきました。
どちらも生成AIによる自動作成という点は共通していますが、情報の扱い方には明確な違いがあります。
Geminiのプロンプトはテーマに沿って自由に発想を広げていく性質を持つのに対し、NotebookLMはノートブックに登録したソースだけを根拠にスライドを組み立てる仕組みです。
| 比較項目 | Gemini(Canvas) | NotebookLM(スライド資料) |
|---|---|---|
| 得意なこと | アイデアからのゼロベース生成、デザインの調整 | 登録済みソースに基づく正確な要約 |
| 情報の根拠 | プロンプトと参照ファイル | ノートブックに登録したソースのみ |
| 出力形式 | Googleスライド、PDF、公開リンク | PDF、PowerPoint(pptx) |
| デザイン調整 | 対話形式で柔軟に指示可能 | 基本は再生成、部分的な直接編集の自由度は低め |
情報の正確性や根拠の明確さを重視するならNotebookLM、発想の広がりやデザインの作り込みを重視するならGeminiのCanvasという使い分けが現実的です。
なお、NotebookLMのスライド資料は登場当初PDF出力が中心でしたが、2026年2月のアップデートでPowerPoint(pptx)形式でのダウンロードにも対応しています。
両ツールとも機能追加のスピードが速いため、実際に業務へ組み込む際は最新の仕様を都度確認する姿勢が欠かせません。
情報の根拠という観点では、NotebookLMは登録したソースの範囲内で回答を組み立てる設計のため、事実と異なる内容が混ざるリスクを抑えやすいという特徴があります。
一方Geminiは幅広い知識をもとに自由度の高い提案ができる反面、根拠の範囲が広いぶん、生成された数値や固有名詞は利用者側での確認がより重要になります。
社外秘の資料を要約する用途にはNotebookLM、アイデア出しや企画提案にはGeminiのCanvasという形で、目的に応じて併用するのも一つの選択肢です。

便利な機能である一方、企業で使う際に押さえておきたい注意点もあります。
個人利用であれば手軽に試せるGeminiのスライド生成ですが、組織として業務に取り入れる際は、個人の感覚だけで判断しないほうがよい論点がいくつかあります。
「Gemini in Google スライド」のサイドパネル機能を使うには、対象となるGoogle WorkspaceプランまたはGoogle AIプランへの加入が前提です(出典:Google ドキュメント エディタ ヘルプ)。
現在契約しているプランでGemini機能が利用できるかどうかは、事前に確認しておく必要があります。
組織でGeminiの利用範囲を管理したい場合は、Admin console側の設定で機能の有効化状況を確認できます。
部署によって利用できるプランが異なるケースもあるため、全社展開を検討する際は、まず一部の部署でスモールスタートしてから範囲を広げていく進め方が現実的です。
プラン選定を誤ると、後から必要な機能だけを追加契約する形になり、結果的に管理が煩雑になってしまうこともあります。
生成AIが作成する内容には、事実と異なる情報や不自然な表現が含まれる可能性があります。
社外への提出資料や経営判断に関わる数値を扱う場合は、生成された内容をそのまま使わず、必ず担当者の目でファクトチェックを行ってください。
Geminiで生成される画像はスライド上での表現を目的としたものであり、実在の人物や統計データを正確に描写するものではないという点も理解しておきましょう。
複雑な図解や精緻なグラフの自動生成は現時点ではまだ発展途上の領域であり、細部の調整は人の手による仕上げが前提になります。
例えば「昨年度の売上推移をグラフにして」と指示した場合、実際の数値を保持していなければ、それらしい形のグラフをもっともらしく生成してしまうことがあります。
数値や固有名詞を扱うスライドでは、元データを別途スプレッドシートなどで用意し、Geminiには構成やデザインの部分を任せるという役割分担が安全です。
社内の未公開情報や個人情報を含む資料をそのままアップロードしてスライド化することには、慎重さが求められます。
個人利用の無料版と法人向けプランでは、入力データの扱いに関するポリシーが異なる場合があるため、機密性の高い資料を扱う際は契約しているプランの仕様を必ず確認してください。
個人アカウントで契約したGeminiを業務利用してしまうと、情報システム部門が入力データの扱いを把握できず、管理が行き届かなくなるおそれもあります。
組織として利用するのであれば、個人任せにせず、法人向けプランへの一本化を早い段階で検討しておくと安心です。
生成された画像やスライドデザインの商用利用条件についても、Googleの利用規約を随時確認しておくと安心です。

導入を検討する際によく寄せられる質問を、あわせて整理しておきます。
Q. 無料版のGeminiでもスライドを作成できますか
個人利用であれば、無料版のGeminiアプリからでもCanvasのスライド生成を試すことができます。
ただし利用できる機能の範囲や上限はプランによって異なるため、業務で継続的に使う場合はGoogle AI ProなどのプランやGoogle Workspaceとの契約状況をあわせて確認しておくと安心です。
Q. 日本語のプロンプトでも問題なく生成できますか
日本語のプロンプトにも対応しており、指示文はそのまま日本語で入力して差し支えありません。
対応言語や利用できる機能は継続的に更新されているため、最新の対応状況はGoogle公式のヘルプページで確認することをおすすめします。
Q. 生成したスライドはそのままPowerPointとして使えますか
Canvasで生成したスライドは、いったんGoogleスライドにエクスポートしたうえで、PowerPoint形式(pptx)としてダウンロードする流れになります。
Canvasから直接pptx形式で書き出す機能ではない点は、覚えておくとよいでしょう。
Q. スライドの枚数や構成を細かく指定できますか
プロンプトの中で希望する枚数や各スライドの見出しを具体的に指定すれば、その構成に沿った形で生成されます。
生成後に「3枚目にグラフを追加して」のように対話形式で追加の指示を出しながら調整していく使い方が実務的です。

Geminiによるスライド作成は、個人利用であれば無料のGeminiアプリだけでも十分に体験できます。
一方、企業として組織的に導入する場合は、利用権限の管理やセキュリティポリシーの設定、社内ツールとの連携など、検討すべき論点が個人利用時とは大きく異なります。
どのプランを選べば必要な機能が過不足なく使えるのか、社内展開時にどのようなルールを設けるべきか、自社だけで判断するのは簡単ではありません。
特にGoogle Workspaceのプラン体系やライセンス料金は改定されることがあり、将来的な組織拡大やAI機能の追加利用まで見据えた設計をしておかないと、後から契約を組み直すコストが発生しかねません。
サテライトオフィスは、Google Cloud プレミアパートナーとしてGoogle Workspaceの導入支援を無償で行っており、Gemini機能を含めたライセンス構成の提案から運用サポートまでをワンストップで提供しています。
ワークフローやシングルサインオンといった自社開発のアドオンと組み合わせることで、資料作成の効率化にとどまらない業務全体のDX推進にもつなげられます。
請求書払いや日本円決済にも対応しているため、Googleと直接契約する場合に発生しがちな為替変動リスクを気にせずに導入を進められる点も、企業の経理・購買部門にとってメリットになります。
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