第44回


情報システム部門の担当者であれば、生成AIを使った調査業務の効率化に関心を持っている方も多いのではないでしょうか。
帝国データバンクが2026年3月に実施した調査によると、生成AIを業務で「活用している」企業は34.5%にのぼり、活用企業のうち86.7%が業務への効果を実感していると回答しています。一方で、活用にあたっての懸念として最も多く挙げられたのは「情報の正確性」で、50.4%の企業が課題として認識しています。(出典:帝国データバンク「生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)」)。
Googleの生成AI「Gemini」に搭載されている「Deep Research」は、複数のWebサイトや社内情報を自律的に調べ、レポートとしてまとめてくれる機能です。市場調査や競合分析といった時間のかかる調査業務を短縮できる一方、正確性の担保や利用ルールの整備といった論点も避けて通れません。
本記事では、Gemini Deep Researchの仕組みから料金プラン、パソコンとスマートフォンでの使い方、そして企業として導入する前に確認しておきたい注意点までを整理してお伝えします。

Gemini Deep ResearchはGeminiに搭載されたエージェント機能で、数百件のWebサイトを自動的に調べながら、複数ページにわたる分析レポートを数分で作成します。
Google公式の説明によると、Deep Researchは「事前準備」「検索」「推論」「報告」という4つの工程で動作します。まずプロンプトに応じて多角的な調査プランを作成し、そのプランはユーザーが確認・修正できます。次にWeb上を自動的に検索し、必要に応じてGmailやドライブ、Chatも参照した上で、収集した情報をもとに推論を重ねながら次の動作を決定します。最後に、詳細情報や分析データを盛り込んだカスタムレポートを作成します。(出典:Google公式「Gemini Deep Research」)。
この仕組みは完全な非同期で設計されている点も特徴です。調査を開始した後は別の作業に移ったり、パソコンの電源を切ったりしても、レポートが完成すると通知が届きます。1つのステップでエラーが起きても最初からやり直す必要がない設計になっているため、複雑なテーマでも安定して結果を得やすくなっています。
通常のGeminiチャットは、質問に対してその場で1回の推論から回答を返します。一方でDeep Researchは、1つのテーマに対して複数の情報源を横断的に調べ、矛盾点や論点を整理してから出典付きのレポートにまとめる点が異なります。
最新版では、Web検索だけでなく個人のGmailやドライブ、Chatをリサーチのソースに加えることもできるようになりました。社内メモやチームのやり取りと公開情報を掛け合わせて分析できるため、単なる情報収集を超えて、業務に即した調査アシスタントとして機能します。
完成したレポートはCanvas機能と組み合わせることで、インタラクティブなコンテンツやクイズ、音声概要に変換することもできます。文章として読むだけでなく、社内向けの説明資料や研修コンテンツの素材としても使い回しやすい点は、テキストのみで完結する従来のチャット形式にはない強みです。
ICT総研が2026年2月に実施した調査では、生成AIサービスの利用経験者のうちGeminiを利用した割合は25.0%で、前回調査の8.9%から大きく伸びています。(出典:ICT総研「2026年2月 生成AIサービス利用動向に関する調査」)。
業務でGoogleのサービスを使っている企業であれば、すでに身近な存在になりつつある機能といえます。

Deep Researchは無料版でも試せますが、本格的に使うならプランごとの利用上限の違いを理解しておく必要があります。
Deep Research自体は、Googleアカウントがあれば無料版のGeminiでも利用できます。ただし利用回数には上限があり、複数の情報サイトでは月5回程度が目安として紹介されています。正式な上限回数はGoogleから公表されておらず、上限に近づくとGeminiアプリ内の通知で知らされる仕組みになっているため、今後変更される可能性がある点には注意が必要です。
また、Deep Researchの利用対象は18歳以上のユーザーに限られており、Geminiアプリへのログインも条件になります(出典:Google公式ヘルプ「Gemini アプリで Deep Research を利用する」)。
Googleは個人向けAIサブスクリプションを「Google AI Plus」「Google AI Pro」「Google AI Ultra」の3プランで展開しています。Google公式サイトの比較表では、ストレージ容量がPlusで400GB、Proで5TB、Ultraで20TB以上と段階的に拡大するほか、Geminiの利用上限についても「Plusは無料版の2倍」「Proは4倍」「Ultraは5xプランでProの5倍、20xプランでProの20倍」という倍率で整理されています(出典:Google One公式「Google AI のプラン」)。Deep Researchはこの3プランいずれにも含まれており、上位プランほど1日あたりに実行できるリサーチ件数が増える設計です。
月額料金についても複数の情報サイトが2026年時点の目安として、Plusが月額1,200円程度、Proが月額2,900円程度、Ultraが月額14,500円程度から32,000円程度としています。本格的に業務でDeep Researchを使うのであれば、まずはGoogle AI Proへの加入が現実的な選択肢になります。ただし料金や利用上限はGoogleの方針変更によって随時見直されているため、契約前には必ずGoogle公式サイトで最新情報を確認してください。
| プラン | 月額料金の目安 | ストレージ | Deep Researchの利用イメージ |
|---|---|---|---|
| 無料版 | 0円 | 15GB | 月数回程度(上限は公式に非公開) |
| Google AI Plus | 1,200円程度 | 400GB | 無料版の2倍相当の利用枠 |
| Google AI Pro | 2,900円程度 | 5TB | 無料版の4倍相当、1日20回程度とする報告も |
| Google AI Ultra | 14,500円〜32,000円程度 | 20TB〜30TB | Proプランの5倍〜20倍相当の利用枠 |
プランが上がるほど利用枠だけでなく、コンテキストウィンドウの大きさやレポートの精度も向上する傾向があります。Google公式サイトでは、100万トークンのコンテキストウィンドウによって最大1,500ページ相当のテキストを分析できるとされています(出典:Google One公式「Google AI のプラン」)。日常的に何本もレポートを作成する部署であれば、上位プランのほうが業務のボトルネックになりにくいといえます。
Deep Researchは個人向けプランだけでなく、Google Workspaceのユーザーも利用可能です(出典:Google公式「Gemini Deep Research」)。2025年1月以降、GeminiのAI機能は多くの有償Workspaceプランに標準搭載される形に整理されており、以前のように別料金のアドオンを都度契約する必要は薄れてきています。
個人のGoogle AI Proアカウントを組織のWorkspaceアカウントに紐づけて使うことも技術的には可能ですが、その場合はGeminiアプリでの利用とWorkspaceアプリ内(Gmail・ドキュメントなど)での利用が別カウントで管理されるケースがあります。個人契約と組織契約が混在すると、どの利用がどちらの契約に基づくものか分かりにくくなるため、企業として導入する際はライセンス体系を事前に整理しておくことが望ましいといえます。

Gemini Deep Researchは、プロンプト欄でツールを選ぶだけで始められます。パソコンとスマートフォンで基本の流れはほぼ共通です。
パソコンからGemini Deep Researchを使う手順は、次のとおりです(出典:Google公式ヘルプ「Gemini アプリで Deep Research を利用する」)。
通常は5〜10分程度でレポートが完成しますが、複雑なテーマではさらに時間がかかることがあります。完成したレポートはGoogleドキュメントへのエクスポートや共有、音声概要の生成にも対応しています。
スマートフォンでも、Geminiモバイルアプリのテキストボックスから「ツール」→「Deep Research」を選ぶ流れは同じです。ただし、Gmailやドライブなど参照ソースを選ぶ機能は段階的に展開されている最中のため、端末によっては表示されない場合があります。
レポート作成中はアプリを閉じていても問題ありません。完成すると端末に通知が届き、設定によっては画面ロック中でも通知内容が表示されます。
完成したレポートは、チャット画面の上部にあるエクスポートアイコンから共有できます。共有リンクを発行する方法のほか、Googleドキュメントへエクスポートしてそのまま編集する方法、レポートのテキストだけをコピーする方法が用意されています(出典:Google公式ヘルプ「Gemini アプリで Deep Research を利用する」)。
過去に作成したレポートは、メニューの「最近」から呼び出せます。ただしこれは「アクティビティの保存」設定がオンになっている場合に限られるため、組織のプライバシー設定によっては過去のレポートを再確認できないことがあります。情報システム部門としては、Deep Researchの成果物をどこに保存・共有するかを事前にルール化しておくと、後から探す手間を減らせます。
Deep Researchの精度を左右するのは、実は最初のプロンプトそのものよりも、提示された調査プランをどこまで具体化できるかです。競合分析であれば比較したい企業名やサービス名を明示し、デューデリジェンスであれば確認したい観点(財務・組織体制・競合環境など)を挙げておくと、レポートの論点がぶれにくくなります。プランを編集する一手間が、後工程での手直しを減らすことにつながります。

Google公式は、競合分析やデューデリジェンス、製品比較などをDeep Researchの代表的な活用例として挙げています。
公式サイトで紹介されている主な活用例は、次のとおりです(出典:Google公式「Gemini Deep Research」)。
情報システム部門の実務に置き換えると、新しいSaaSツールを導入する前の比較検討や、セキュリティ関連の最新動向の調査、社内向け説明資料の下敷きづくりなどにも応用できます。あくまで調査の下準備を担う位置づけとして捉えると、既存の業務フローに組み込みやすくなります。
たとえば複数の勤怠管理システムを比較検討する場面では、各サービスの機能・料金体系・導入実績についてプロンプトで具体的に指示すれば、比較表形式のレポートを短時間で得られます。そこに社内で共有している要件リストをファイルとして読み込ませれば、自社の条件にどこまで合致するかという観点も加味した調査になります。ゼロから情報を集めて表にまとめる作業を、Deep Researchが下調べとして肩代わりしてくれるイメージです。

便利な機能である一方、企業として使う際にはいくつか確認しておきたいポイントがあります。
冒頭で触れたとおり、生成AI活用企業の懸念として最も多く挙げられているのは情報の正確性です。Deep Researchも例外ではなく、参照した情報源の解釈を誤ったり、古い情報と新しい情報を区別できなかったりする可能性があります。Deep Researchが作成したレポートは完成品ではなく一次ドラフトとして扱い、社外への提出や意思決定に使う前には必ず人の目でファクトチェックすることが欠かせません。
Deep Researchは個人のGoogleアカウントでも使えるため、社員が業務上の調査を個人契約のGoogle AI Proで行ってしまうケースが起こり得ます。個人アカウントは組織のデータ保護契約や管理者による利用統制の対象外になることが多く、機密性の高い情報を扱う調査には適していません。
特に見積書や契約条件、未公開の事業計画など社外に出せない情報をプロンプトに含めてしまうと、管理者の目が届かないところで情報が扱われることになります。「便利だから」という理由で現場が個人契約に流れてしまう前に、組織として使えるプランと利用範囲を明示しておくことが、結果的に情報漏洩リスクを抑えることにつながります。
日本情報システム・ユーザー協会が実施した「企業IT動向調査2026」では、AI活用の拡大に伴って組織的なガバナンス体制を整えている企業が約7割に達している一方、部門ごとにルールが異なる企業も一定数残っていることが報告されています(出典:一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会「企業IT動向調査2026」速報)。個人契約と組織契約が入り混じらないよう、利用ルールを情報システム部門側で先に定めておくことが望まれます。
Deep Researchは18歳以上のユーザーが対象で、150か国以上、45以上の言語で利用できます(出典:Google公式「Gemini Deep Research」)。Gmailやドライブをリサーチのソースに含めるには、Google WorkspaceアプリをGeminiアプリに接続しておく必要がある点も、事前に確認しておきたい条件です。

Deep Researchを企業で使いこなすには、機能そのものの理解に加えて、ライセンス設計やセキュリティ設定、社内ルールづくりまでを一体で進める視点が求められます。
サテライトオフィスはGoogle Cloudプレミアパートナーとして、Google Workspaceの導入支援を無料で行っているほか、Gemini Enterprise(旧Agentspace)の導入支援も提供しています。Deep Researchを含むGemini機能を組織全体で安全に使いこなしたい企業様に向けて、ライセンス構成の提案から設定代行、管理者向けトレーニングまでを一貫してサポートします。
ワークフローやシングルサインオンといった自社開発アドオンによる業務効率化もあわせて提案できるため、Deep Researchの活用だけにとどまらず、Google Workspace全体の運用改善を検討したい方は、ぜひサテライトオフィスへご相談ください。
ルールと体制を整えたうえでDeep Researchを取り入れれば、調査業務の時間を減らしながら、その効果を実感できる側の企業に近づけるはずです。
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